自分にとって必要なものを追いかけた先に―。 りんご農家を家族で営む、今と未来図

青森県弘前市で、りんご農家を営む小倉さんご家族。主である慎吾さん自身は実家がりんご農家だったものの、「自分がやるとは思ってなかった」と話し、一度は都会暮らしへと移ります。そこで見つけた“自分にとって必要なもの”とは―。二人三脚で農園を支える奥様とともにお話を伺いました。

 

都会で気づいたことは“必要なものは田舎にある”

 

慎吾さん:私自身は両親がりんご農家だったわけですが、正直なところ、“親に憧れて”みたいな経緯でここに辿り着いたわけではないんです。ただ、一度都会に出て暮らしていた時に、自分には合わないと気づいてしまって。都会の方が何でもあると言われるかもしれませんが、自分にとって必要なものは田舎にあると。特に感じたのは「自分のスペースが限りなく少ない」ということ。田舎に帰れば土地がいっぱいあって、自然にも恵まれていて、食べたいものは作ることだってできる。気が付けば青森に帰ることを心に決めていました。

 

自分たちのペースで、自分たちのりんごを育てる歩み

 

加代子さん:私は正直なところ、農業の“の”の字も知らないような人でした。仕事もアパレル関係に就いていて。ただある時から食に興味を持つようになって、「自分で食べるものくらい自分で作ってみたい」と、考えるようになったんですね。不思議なのが、そういう思いって口に出したり行動に移したりしなくても、きっかけや出会いを引き寄せるもので。ちょうど「自分で何か育ててみたいな」と思っていたところで偶然出会ったのが主人でした。

 

 

慎吾さん:そうして私も夫婦で農業を始められるようになって、最初は親元でやっていたのですが、「自分たちのペースでやっていきたい」と思ったタイミングで独立しました。やはり“農業”と一口に言っても、それぞれスタイルや大事にしたいことって異なりますから…。私たちは特に、見た目より味を重視したりんごづくりがしたいと、今もそのポリシーで続けています。

慎吾さん:今はりんごだけで20品種ほど、その他に桃も少量ですが栽培しています。販売先としては、私たちの場合多くが個人のお客さんです。あとは県内外のカフェでりんごを使いたいという方がいたら是非とお願いしています。市場や農協というよりも、そういう繋がりを着実に伸ばしていくっていう方が今の自分たちに合っているのかもしれないです。

おすすめの食べ方を聞かれると少し困ってしまうくらい、“そのまま”が一番美味しいと私たちは感じています。あとは中をくりぬいてオーブンで焼いて…焼きりんごって言うんですかね、それとかはこれからの季節、クリスマスの食卓などにもいいかもしれません。

 

 

おぐら農園のりんごを広めていくために、新たな一歩

 

慎吾さん:そういえばちょうど昨日(取材時点)もそうだったのですが、私たちはマルシェや地域のイベントなどに出店しています。ケーキを召し上がった方にも、是非近くで出店があればお越しいただきたいですね。

加代子さん:ちなみに今回ケーキに使ってもらっている「ぐんま名月」は蜜がとても多い品種で、輪切りにして太陽にかざすと光が透けるくらいなんです!今で言う“映え”でしょうか(笑)ぜひそんなりんごの一面にも注目してみてほしいです。

  

 

慎吾さん:りんごを育てる農家は当然自分たちだけではありませんから、今回のコラボレーションも然り、もっといろんな人に食べてもらう・使ってもらう工夫もしていきたいですね。これから具体的にやろうとしているのは、「カルヴィル・ブラン」という加工用のりんごの栽培。タルトタタンなどの製菓に向いているので、そういったりんごを探している人たちと繋がって、私たちのりんごを広めていくきっかけが作れたら嬉しいです。