笑顔と元気の循環を日高町から届けたい。 フルーツほおずきを育てる野澤夫妻の歩みとこれから

北海道は沙流郡日高町に「フルーツほおずき」を栽培する夫婦がいます。のざわ農園の野澤裕二さんとみゆきさんです。メロンやお米を育てる農家の息子として育ったご主人と、「結婚して初めて」農業に触れた奥様。フルーツほおずきとの出逢いから農業に懸ける思いまでを、奥様のみゆきさんに語っていただきました。 

信州との繋がりから舞い込んだ「フルーツほおずき」

私たちは今、夫婦で営む農園でフルーツほおずきやとうもろこし、メロンなどを栽培しています。農園のある日高町は競馬をされる方ならご存知かもしれませんが、数々の名馬を生んだサラブレッドの産地。一方で「それだけではなく、特産品をつくろう」という動きも出始めたのは、ちょうど主人が役場職員をしていた時でした。有志で集まった高齢者団体の皆さんとともに何を栽培しようかと模索していたところ、たまたまあった信州と繋がりから「フルーツほおずき」が候補に上がりました。あまり馴染みのない果物かもしれませんが、美味しくて、栄養価も高く、独特の香りもすごく心地よい。「食べる生サプリ」とも呼べるくらい、健康や美容にもいいんです。そんなフルーツほうずきの苗が、高齢者団体のサポートをしているよしみで我が家にもやってきました。そこで最初は趣味程度に、自宅でもほおずきを育てる日々が始まったんです。

売り物になるのは全収量の半分、手間との戦い


それから夫の定年退職があり、「のざわ農園」として本格的に農業へシフトしたのが4年前のことです。当時から栽培は夫が全て行い、広報は私が一手に引き受け、言わば二人三脚で歩んできました。フルーツほおずきが世に出るまでの過程はなかなか想像がつかないかもしれませんが、とにかく手間がものすごくかかるんです。収穫に辿り着くまでには、毎日枝吊り作業が必要ですし、収穫も一粒一粒手作業。さらに、苦労、手間が余計にかかりますが、農薬化学肥料不使用での栽培を行っています。

収穫段階では中が見えませんから、売り物になるかならないかもわかりません。一粒ずつ“がく”を剥いて中を確認し、虫がいたり傷んでいたりしたらアウト。追熟している過程で傷むパターンもありますから、最終的に売り物として出せるのは全収量の半分ほどしかないんです。

そもそも「食べるものを生み出せる仕事」って貴重ですよね。私にとっても人間の生きる毎日を支えられる仕事って魅力的で、今ではすっかり農業という仕事に誇りを持っています。だからこそ、今もそうですが今後も、農作物をつくっている人を応援したいなと、そういう思いで仕事に向かっているんです。

農業を通して笑顔と元気が循環する未来をつくりたい


正直なところ日本における一次産業は課題も多く、それは各所で叫ばれている後継者不足や所得格差にも表れています。ただ実際は「食」を通して私たちの身体、すなわち生きる資本をつくる仕事だからこそ、現状を変えないと、と思っているんです。農作物を育て栽培する過程にある付加価値をきちんと伝え、適正価格で買ってもらえるようにすることもそうですし、あとは若い世代の応援ですよね。新規就農の支援だったり婚活の応援だったり、これからの世代が農業に定着するような働きかけを進んでやっていきたいと思っています。


生産者が元気で長く働くことができれば、その作物を受け取った人も笑顔になれると思いますし、その知らせが私たちの元気やパワーにもなります。自然の恵みを美味しくいただいて、いつまでも若々しくいられるようにということはもちろん、笑顔と元気が循環していく世の中をつくっていきたい。“農作物をつくって売る”ということだけに満足せず、そうして未来に貢献できる「のざわ農園」でありたいですね。