“博士”から受け取ったアップルバナナを育てて 海の向こうに広がる夢に向かって、一歩ずつ前進


“博士”から受け取ったアップルバナナを育てて

海の向こうに広がる夢に向かって、一歩ずつ前進

沖縄県名護市、暖かい気候の続く土地に、アップルバナナを始め果樹や野菜づくりに奔走する農家があります。荘司幸一郎さんの営む「マルエスファーム」です。沖縄という地に惹かれ、大阪から沖縄へ移り住んだのが6年前のこと。「色々な仕事をしてきたからこそ、今がある」と充実感を滲ませる荘司さんにお話を伺いました。


 

やっぱり“戻りたくなった”沖縄という土地


私の生まれは大阪府。学生時代はもちろん、就職してからもしばらく大阪で過ごしていました。その頃の職業は大工。今とは随分違うなと思われるかもしれませんが、農家でも小屋を建てたりトラクターに乗ったり…意外と役に立っているんです。

「ではなぜ沖縄に」というところですが、とにかくこの地が大好きで。実は23歳の時にも、ダイビングの仕事で阿嘉島に3年ほど住んでいたことがありました。そこから結婚を機に大阪に戻るわけですが、やっぱり沖縄がいいなという思いが拭えず、家族と一緒に沖縄へ移住することにしたんです。

正直なところ、最初は何の仕事をするかもはっきりとした目処が立っていませんでした。ただ沖縄の雄大な自然に囲まれて過ごすうちに、「この自然のなかで働きたい」という気持ちが大きくなって、気づいたら…ですね。大阪に住んでいた時は“農業をやる”なんて思わなかったんですが、環境が後押ししてくれたのかもしれません。



“バナナの博士”からアップルバナナを授かって


農家を志してからは、農業法人での研修を経て、自分でも少しずつ農作物を育てるようになりました。当時は何を主力にするっていうのもなかったのですが、2年目になった時にバナナの博士(私の師匠です)からアップルバナナの苗をいただいたんです。「お前バナナやらんか?」と、ハワイから持ってきたという苗のうち50株を受け取りました。今思えばそんな偶然がきっかけですが、いざ食べればとてもおいしいし、畑に来れば葉の木陰で思いのほか涼しい。私にとってはパワーをもらえる食材です。



まずはアップルバナナを全国区に!


アップルバナナはまだ全国的に見ても馴染みの薄い果物ではありますが、食べたことがないという人にも是非試してほしいと思ってます。熟していく過程のどのタイミングかによって、酸味と甘味のバランスが変わってきますから、“自分なりの食べごろ”も見つけることができます。一般的には、皮の部分がじわ~っと黒っぽくなってきたら食べごろと言われていますが、黄色のうちも酸味が爽やかで心地いいです。ちなみにそのまま食べる以外だと、バナナジュースがおすすめ。バナナに牛乳と氷だけで味がしっかりしますし、きなこやゴーヤを加えれば栄養価も高くなって、朝ごはんにもいいですよ。

当面の目標としては、沖縄でのアップルバナナの生産を安定させて、より多くの人にアップルバナナを知っていただくこと。そして“全国区”と言えるくらい広めることができたら、少しずつ海外にも視野を広げていきたいです。沖縄のように、その土地の良さやそこで取れるものを材料に、地元の人が自分たちで長く続けられる農業のあり方をお手伝いしたいなと。まずは沖縄での成功をめざすのが一番ですが、いつかそんな夢まで異国の地で叶えられたら幸せですね